Peeringの世界とインターネット

改めまして、こんにちは。BBSakura Networks社長の佐々木です。 この記事はBBSakura Networkのアドベントカレンダー 10日目です! 今日はインターネットのバックボーンについて焦点を当てて話をしたいと思います。

インターネットとは?

インターネット@Wikipediaとは「インターネット(英: the Internetあるいは英: internet)とは、インターネット・プロトコル・スイートを使用し、複数のコンピュータネットワークを相互接続した、グローバルなネットワーク(地球規模の情報通信網)のことである。」とWikipediaに書かれているようにIPを用いたコンピューターネットワークを相互接続しあったものになります。

相互接続の方法と種類(Peering vs Transit)

インターネットにおけるネットワーク同士は通常BGPというプロトコルで接続され、AS番号という番号をもってネットワークを識別しております。会社名の代わりに2914(NTT Communications)、2516(KDDI)、17676(SoftBank)という具合にAS番号で会話をするのが業界通な人間です。 このAS同士を接続すること(BGP Peerを上げること)をPeeringと言います。 BGPでは自分の経路情報(自網に向けて流してもいいIPアドレスの集まり=IP Prefix)を相手に広報し、経路情報を受けている経路の中で一番効率的(に見える)なルートに対してパケットを送信します。相手からの情報を信用してトラフィックを送るところは相互信頼の元に接続がなりたつ、インターネットの原点そのものではないのかと思います。(偶に他人の設定ミスで通信障害が起きてしまうことがあります。)

インターネットの相互接続は大きく分けて2つあり、Peering(自ASの経路のみを交換する)もしくはTransit(一般的にはInternet全体への経路=Full Routeの経路を交換し、当該ASを経由してインターネットへの接続を提供)があります。 PeeringにはIXを介したPublic Peerと直接ルーター同士を1:1で繋いだPrivate Peeringがあります。

Peeringはお互いのビジネスメリットを元に成り立っております。 コンテンツの人たちはユーザーに近いISPと直に繋がることで障害ポイント(Transit プロバイダ)を減らし、ISPの人たちはコンテンツと直に繋がることで同様に品質の向上(遅延の低減)やコスト削減を実現しております。

Peering交渉について

インターネットは相互接続で成り立っておりますので、Peeringなしには成り立ちません。 Peeringの世界は大変おくゆかしい世界で、世界中のネットワークエンジニア(AS持ってる会社のルーター管理者)があーだこーだ理由をつけて、お酒を飲むためにオフラインで集まり、BGP Sessionをあげる交渉をし、お互いのネットワーク経路を交換します。オンラインでは断るにも「No」とメールで返信するだけですが、オフラインコミュニケーションをする事で、断る行為に対するハードルを上げている訳です。 オフラインのPeeringイベントは毎年たくさん開催されており、例えば以下のような物があります。 - Peering BoF (JANOGInternet Weekとかの陰で開催されてます。) - IXのユーザーを集めたイベント(JPIXさん、インターネットマルチフィードさん、BBIXで各社年2回ずつぐらいやってます。) - APRICOT (APNIC主催のアジアのインターネットイベントです。次はオーストラリア!) - Global Peering Forum (北米で開催されるPeering Forum) - Peering Asia (日本のIX事業者で始めたアジア事業者の為のPeering Forumです) - European Peering Forum (ヨーロッパで開催されるPeering Forum) - その他、 ISOCのEvents Calendar見るとたくさんあります 

このように、ネットワークエンジニアはインターネットを支えるために世界中の観光地で毎年楽しくPeering交渉をしているわけです。 他にもPeering in JapanというSlackや、Peering in JapanのWebsite等で日々情報交換を行ってます。

物理の世界

Peeringの話ばかりになってきたので、物理の世界(Layer 1)の世界の話をしたいと思います。 我々インフラエンジニアにとっては、やはり論理よりも物理的な接続の世界が一番興味深いのではないかと思います。 最近では事業者間の相互接続については、10Gbpsや100GbpsのEthernetで接続するのが一般的です。 ネットワークPOPと呼ばれるようなネットワークが集まったDCに外部接続用のルーターを置き、そこでIXやPNI(Private Network Interconnection)をする事が多いです。

ネットワークPOPと自網の間はキャリアの専用線光ファイバーを使って接続します。 キャリアの専用線サービスでは一般的にWDMという装置を使い、ファイバーの中で複数の回線(波長)を多重化しております。国境や島をまたがる部分では海底ケーブルを使って接続します。日米間などでは8000kmを超える距離のケーブルが引かれており、房総半島からアメリカ西海岸や東南アジアまでケーブルが伸びているというのは考えるだけでも大変ロマンのある話でございます。ですので、我々のようなインフラエンジニアはみなさん定期的にこういったインフラを観察をしに行くことを趣味とする人間も多く、うちの社員のようにそういったロマンあふれるインフラの写真集を作る人もいます。

主要な海底ケーブルはTele GeographyのSubmarine Cable Mapに掲載されており、通勤時などの暇な時間に偶にiPadなどで眺めるのがインフラエンジニアの嗜みとなります。 ここを見るとよく分かりますが、実は日本は北米とアジアの玄関口になってます。 BBIXではこの地の利を生かして、海底ケーブルの陸揚げ局にノードを設置し、アジアと北米の架け橋のようなHubになることを目指してます。

東日本大震災で日米間のケーブルが多く被災してから日本を経由しないケーブルが増えましたが、まだまだアメリカとアジアの通信で日本を経由する通信が大半を占めていることが想定されてます。イチ日本国民としてこの地政学的な優位性を元に、日本がアジアのHubのような環境になっていけば良いなと思ってます。 (その為には電気代の高さやいろいろな規制の動きなどへ注意を払うことが重要だと思います。)